ムック - シャングリラ

シャングリラ

シャングリラ

 およそ2年振りに発売の。ムックの10thアルバム。

 ここ数作で見せたデジタルとバンドサウンドの融合は、前作「カルマ」で一つの到達点を感じさせたけれど、本作はそこからさらにブラッシュアップ。
 スラッシーな突進力とザクザクと切り刻むようなリフにデジタルサウンドが結び付き、ほんのりと切ないメロディを包むムック流メタルコア「Mr.Liar」で幕を開け、デジタルを共存させながらダンサブルに跳ねるヘヴィロック「G.G.」、ジャパニーズハウス界を牽引するDaishi Danceとコラボした、泣きの旋律が印象深いエレクトロダンスロック「アルカディア」、キラキラと輝く爽やかな疾走感を見せる「ニルヴァーナ」はデジタル色が色濃く反映されている。呪術的な民族音楽風な雰囲気からピースフルな子供の歌声が響く「狂乱狂唱 〜21st Century Baby〜」も歌詞が工夫されていて面白味があるし、独特の浮遊感と力強さを感じさせる「MOTHER」雄大かつ壮大な広がりを見せる「シャングリラ」も新機軸と言えて、充実感は抜群にある。
 過渡期を経て、デジタルとの融合は結実した出来栄えで、とにかく格好良い。

 ただムックには、方向性迷子という異名があって(命名は私だが)、アルバムに多種多様なジャンルを放り込んで散漫になってしまうという悪癖があるのだけれども、それは本作でも同様のことが言える。
 ルーズに爪弾かれるリフが耳に残るパンク曲「ハニー」、哀愁を全面に押し出した昭和ロックフォーク「終着の鐘」、スウィング感が気持ち良いジャズナンバー「ピュアブラック」辺りは一つ一つ抜き出してみるとクオリティは高いのだけど、「シャングリラ」というアルバムの方向性にそぐわないと思う。
 特にその傾向が強いのが「Marry You」。この曲に至っては、残念ながら蛇足にしか感じられなかった。

 作品全体の方向性を考えると相変わらず「うーん」ってな印象を抱いてしまうのだけど、ここ最近の作品の中では楽曲の充実度は一つ頭が抜けてると思う。久し振りに69曲目におまけが入っているのも、従来のファンには嬉しいサプライズだった。