ジェームズ・ワン - ソウ

ソウ 【廉価版1,890円】 [DVD]

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 浴槽の中で溺れそうになったアダム(リー・ワネル)は、ふと気が付くと薄汚れたバスルームの隅に鎖に繋がれていた。対角線上には、医師のゴードン(ケイリー・エルウィス)が同じように鎖に繋がれている。そして中央には、自殺した男の死体が一つ。二人はテープを所持しており、それを再生すると"ジグソウ"と名乗る男からのメッセージが吹き込まれていた。


 おかしいな、もっとスプラった場面が多かった記憶があるんだけども……。ここ最近、観る映画が復讐劇やら何やらばかりで、銃に撃たれて血が吹き出たり必要以上に肉体の欠損を見せ付ける内容が盛んだったものだからグロ耐性のアビリティが追加されていたのかもしれない。

 初見時はジグソウの仕掛けた罠の異様性や、作品が持つスピード感のお陰でどっぷりと世界観に浸って観ていたのだけど、今回は落ち着いて観察することが出来た。
 演出力がとにかく素晴らしい。ジグソウが過去に仕掛けた数々のゲームの見せ方が特に秀逸で、本作の不気味さがより一層際立っている。思えば、ソウシリーズの魅力はその不気味なゲーム性にあって、スプラッタ/グロ描写は付随される要素であるはずなのに、そこがクローズアップされてしまって、シリーズが進む毎に不本意な方向に捻じ曲がっていたように思う。
 まあ改めて考えると、オチに当たる部分が腑に落ちないというか、必要性があったのか、なんて少々疑問に思う部分はあったりもする。衝撃度は相当なものなので、一度観た限りでは思わず感心させられたけれど、ジグソウの意図が良く分からない。観客席ではなくてプレイヤーの側でゲームを監視したかったということなのだろうか。ドキドキしながらジグソウがあんなことしてたと考えると萌えるけど。衝撃を求めるばかりに脚本はややおざなりになっている面はあるかもしれない。
 とは言え、本作が放つ(低予算かつB級テイストも含めた上での)パワーには強引な説得力があるし、頭カラッポにして楽しめるエンタメ作品であることには間違いない。現に私は今回も楽しめたし。