羽海野チカ - ハチミツとクローバー

ハチミツとクローバー 1 (クイーンズコミックス)

ハチミツとクローバー 1 (クイーンズコミックス)

ハチミツとクローバー 10 (クイーンズコミックス)

ハチミツとクローバー 10 (クイーンズコミックス)

 サブカルオシャレ感覚に支配されないために、このエントリのBGMはAnaal Nathrakh「Vanitas」でお送り致します☆ミ

 浜田山美術大学に籍を置く五人の若者たちを中心に、それぞれの片想いを軸に、人々の繋がりや恋模様を描く。言うまでもなく、幾度もメディアミックスが繰り返され、「NANA」と共に近年の少女マンガ界を牽引していた作品。
 数年前に一巻を読んで「うーん……」と思ったきり再び手を伸ばすことはなかったのだけども、今更ながら再読したら、評価の高さも納得の傑作でした。

 
 掲載紙の都合上、CUTiEcomic、ヤングユー、コーラスと移籍したけれど、いずれの雑誌も女性がメインの読者層になる。にも関わらず、(主にサブカル方面の)男性からも支持を受けたのは、本作の本質が恋愛ではなくて、青春群像劇にあるからだと思う。
 間違いなくここに描かれているのは各人の恋愛話なんだけれど、瑞々しい感性で描かれる物語は、登場人物たちの叶わぬ恋も含めて、読者にとってのある種の理想郷として映るのではなかろうか。特に私のような、暗い部屋の中でメタルを聴きながらパソコンのモニターを相手にヘドバンをぶちかましていたような思春期を送っていた人間からすると(おい、BGMを止めろッ! 今もそうじゃねーかって思われちまうッ! まァ紛れもない事実だけどなッ!)、ハチクロ世界の青春は「どこでボタンを掛け違えたんだろうか……」と頭を悩ませてしまうほどの破壊力だ。むしろ青春欠乏症に陥って知恵熱が出る寸前だったほどだ。いやマジで。

 また、登場人物たちが前向きに生きているところも好印象。
 清々しい登場人物たちの一挙手一投足が愛しく思えてしまうし、もがき足掻きながら懸命に今を生きようとする姿は応援したい気持ちにさせられる。
 特に山田の恋が良い。真山の行動を直視することで現実を受け入れようとするけれど、それはあまりにも辛い事実で、どうしていいのかわからなくなり不安に苛まれる姿が泣ける。あと山田の寝姿から覗く美脚が素敵。はむはむしたい。当方、脚フェチであります!

 それと、とても上手いなあと感心したのは、文系ド直球な“語り”に終始するのではなくて、思いのほかギャグを絡めている点。そのギャグも薄ら寒さや過度なクドさはなくて、きっちり笑えるのは強みだと思う。
 個人的に特に笑った場面は、パン屋さんで似顔絵パンのオーダーメイドを手伝った際に、あまりにもリアルに作りすぎてしまって、出来栄えが焼け焦げたオッサンの頭部に仕上がってしまった場面(六巻)と、入院のお見舞いとして牛スジと金柑の砂糖煮を持って行って、それを食べた入院患者さんや看護師さんが、あまりの味の酷さにおやすみプンプンみたいな絵柄になる場面(九巻)。
 特に九巻以降はいわゆる欝展開に近い様相を見せるけれど、時折挿入されるギャグパートがしっかりとバランスを取っていて良かった。

 ところで、読了してからwikipediaをぼんやり眺めていたら、映画版キャストで笑った。男性の主要メンバーを抜き出してみるとこうなる。

竹本祐太:櫻井翔
森田忍:伊勢谷友介
真山巧:加瀬亮
花本修司:堺雅人

 なんというか、凄い。
 能町みね子女史が「モテない系女子版(俺たちデトックス会版)好きな男ランキング2012」というなんともステキ企画を行っていたのだけども、桜井翔以外の男性陣が上位にランクインしているではないか。
 リンク先を参照して頂けたら分かるけれど、伊勢谷友介(14位)、加瀬亮(2位)、堺雅人(4位)というべらぼうなハイスコア。竹本役をジャニーズ枠と考えると、二宮和也(27位)になるが、個人的にはそこまで違和感は感じないかも。