ジェームズ・ワン - 狼の死刑宣告
- 出版社/メーカー: Happinet(SB)(D)
- 発売日: 2010/03/19
- メディア: DVD
- 購入: 1人 クリック: 26回
- この商品を含むブログ (24件) を見る
投資会社の副社長ニック(ケヴィン・ベーコン)は、妻と二人の息子と共に幸せな生活を送っていた。ある日、長男とガソリンスタンドに立ち寄ったところ、ギャングと鉢合わせてしまう。入団テストを兼ねた度胸試しとして、ギャングの一人ジョー(マット・オリアリー)はニックの長男を惨殺する。数日後、ジョーは逮捕されるが、裁判所の判定が納得のいく内容ではなかったため、ニックは証言を拒否し、ジョーは釈放されてしまう。その日から、ニックのギャングたちへの復讐が始まる。
原作は「狼よさらば」でお馴染みのブライアン・ガーフィールド。原題は「デス・センテンス」。
監督は「ソウ」シリーズでお馴染みのジェームズ・ワン。誰もが期待を抱くであろう残虐描写はてんこ盛りだった。吹っ飛ぶ頭、潰れる脚、ヒャッハー!
設定はありきたりな70年代的(まあ「狼よさらば」の原作者だし)ヴィジランテムービーで、奇を衒った展開もなく、とても手堅い作り。それでもこういった私刑執行人の復讐劇に心震えない野郎なんているのか!? いや、いない!(反語!)
主人公ニックは 息子の仇を取るために躍起になるも、あくまでも暴力とは無関係の生活を送ってきた一般人に過ぎない。ギャング襲撃を試みても、怪我はするし、証拠まで残してきたりと散々だ。挙句、仲間を殺されたギャングの怒りを買い、報復まで受けてしまう。
本作の主題は「暴力の連鎖」。復讐は新たな復讐を生み、お互いにかけがえのない存在を失うことになる。ギャングのボスであるビリー(ギャレット・ヘドランド)がニックと対峙して「お前の姿、俺たちと同じだぜ」と呟くが、この台詞は映画のテーマを集約した素晴らしい台詞だと思う。その台詞があるからこそ、最後の場面でのニックの姿が寂しく切なく映って、感慨深さがあった。
問題があるとすれば、中盤でのギャングたちの行動。演出の問題でギャングが迂闊に見えてしまって、リアリティが欠落しているというか。RHYMESTER宇多丸師匠も指摘していたけれど、ニックやその家族を殺すつもりならそれぞれに一発しか銃を撃たないなんてことはないはずで、それなら完璧に止めを刺す前にパトカーのサイレンが聞こえてきたので逃走した、という方がリアリティもあるし、ギャングらしい行動に思えるのになあ。
それにしても、ニックを演じたケヴィン・ベーコンは筆舌に尽くし難い素晴らしい表現力を持った役者だなあと改めて思った。特に、病院で次男に語りかけた後、復讐の狼へ変貌を遂げた表情の変化は震えるほど暴力の匂いに満ちていて格好良い。
武器商人ボーンズ(ジョン・グッドマン)から銃器を購入し、髪の毛を剃り落とすことで決意を固め(名作「タクシードライバー」のオマージュに!)、息子の遺品であるジャンパーを着込む。そして説明書を読みながら銃器の扱い方を覚え、時にはカートリッジも反対に装着したりする。ドジっ子か!
この場面は、復讐鬼でありながら一般人であるニックを描いた劇中随一の名場面で、ここでニックに対して非常に愛着を持った。見せ方が半端なく上手いなあと感心しました。
予告編がまた秀逸で。拳を握り締め震えて観よ!