アンドリュー・ラウ、アラン・マック - インファナル・アフェア

インファナル・アフェア [DVD]

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 警察学校に入学したラウ(アンディ・ラウ)とヤン(トニー・レオン)。上層部に優秀な人材と見込まれたヤンは、香港マフィアに潜入を命ぜられ、突然退学することになる。一方のラウも、香港マフィアが潜入のために送り込んだスパイだった。やがて二人は、それぞれの組織で重要なポストを担い、香港の裏社会の濁流に飲み込まれ、苦悩と葛藤の日々を過ごすことになる。


 機会があったので数年振りにもう一度視聴したのだけども、やはり素晴らしかった。
 陰と陽のようにシンメトリカルな関係性の主役を軸に、非常にサスペンシブでスリリングな物語は、手を握るほどの熱さがあって良い。途中、キーパーソンの死によってラウとヤンの運命が重なり合う展開も胸に来る。
 舞台である香港の独特な雰囲気も良い。マフィアとの攻防戦で見せた、ネオンがギラギラと光るアジアンゴシック的な街並みもあれば、ビルの屋上から見える、清々しくも少し冷たさを感じさせる青味もあって、場面場面で見せる色合いがとても印象的。
 そして何より、本作の最大の特徴である、男が惚れてしまう登場人物の男クサさ! 「クローズZERO2」の鳴海大我(加藤ノブアキ)によるホモホモしい名言「漢に生まれて良かったなァ」って感じだ。
 以前は数奇な運命に翻弄されるラウとヤンに焦点を絞って観ていたけれど、今回改めて思ったのが、脇役の存在感の凄さ。特に、ラウ、そしてヤンの正体を知るウォン刑事(アンソニー・ウォン)がめちゃくちゃ渋くて格好良い。ビルの屋上で、何年も続く潜入捜査に限界を感じているヤンと会話をして、冗談を言った瞬間に弛緩する表情なんて堪らない。チョイ悪オヤジはアンソニー・ウォンのためにある言葉だなと悟った。近年ではジョニー・トーラストエグザイル/絆」でも無口でニヒルなマフィアの男を好演していたけれど、ここでのアンソニー・ウォンは随一の存在に思う。
 勿論、主演二人も素晴らしい。ラウもヤンも今の生活に少なからず充実感を得てしまい、「本当の自分」という道へ苦悩し、矛盾する生き方によって生まれる葛藤する。繊細な感情の変化を実に見事に演じ切っていた。

 ギャング/マフィア映画は各国の特徴が色濃く出るジャンルだと思うけれど、香港ノワールは、アクション的娯楽嗜好とファミリーのホモソーシャル嗜好のハイブリッド性が特徴的で、本作はまさにそれ。
 ジョン・ウー監督の代表作「男たちの挽歌」と並ぶ、香港ノワールの大傑作だと思う。